リュッケルトの詩2

僕が大学2年のころ

声楽家の佐々木成子先生のところに

あるパンフレットがあった。

ウイーンの夏季音楽コースの案内だ。

当時外語のドイツ語二年生だった僕は

「大ちゃん行ってみたら?」

という佐々木先生の言葉に

1も2もなく飛びついた。

ピアノの講師は数人

中でも

Joseph Dichler (ヨーゼフ・デイヒラー)氏のプロフィールに

「ウイーン大学物理学博士課程修了」と書いてあったことから

「この人にする!」

あっさり決めたのは

ご縁があったからだろうか。

先日師匠の尾高惇忠先生のところで

先生の御母上が

かのデイヒラー氏の本を

翻訳されていることを知った。

御父君である尾高尚忠氏の

親友であったこともわかったが

何と四半世紀たってから

教えてくれる先生も先生だ。。。。

デイヒラー先生のレッスンは

まだ当時存在したベヒシュタイン・ザールで

2週間のレッスンとミニ・コンサートを終えたのだが

その時ウイーンで

心に残った演奏会に出会った。

クリスタ・ルードヴィヒとチャールズ・スペンサーの

シューベルト「冬の旅」だ。

夏にシェーンブルン宮殿で行われたこのコンサートは

本来ならチケットをなかなかとれないはずが

運よく一番前の席が手に入り

かぶりつきで

大歌手ルードヴィヒの冬の旅を聴いた。

当時僕は20歳。

そしてアンコールに歌われたのが

Ich bin der Welt abhanden gekommen…

そのときの云い知れぬ余韻

その香り

何か浮遊する感覚

漂うような不思議な世界

でも

その理由がわからなかった。

「なぜこんな感覚になったのか」

思えば過去に一度だけ

同じような経験をしたことがある。

小澤征爾指揮ウイーン・フィルの

80年代のコンサートで

後半のプログラムは覚えていないが

前半はドビュッシーの牧神とショパンのPC2番

(ソリストはイーヴォ・ポゴレリッチ)だったように記憶する。

この定期演奏会の模様をFMからエアチェックし

思い出しては引っ張り出して

この録音を聴いていたのは

高校生の時だろうか。

ポゴレリッチのピアノで

ショパンの2番のコンチェルトが聴きたかったのだが

小澤さんとウイーンフィルの奏でる

牧神の午後のひとときには

ベッドから体が浮遊するような感覚を得た。

でも

このマーラーの歌曲との出会いは

それを凌駕するほどの

強烈さだった。

to be continued….

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