Muranplanet「指揮者村中大祐の世界」

「私、強い音キライ。」6か国語を操り世界で活躍する異色の指揮者、村中大祐。「ホンモノの自由と豊かさ」を音楽の中に見つけた男が、その成功法則、マインドセット、リーダーシップ、海外進出、音楽、そして人生を語る!

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コスモポリタンの勧め⑧「思いつくまま。脱線の巻」

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From:村中大祐
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ロレンツォ・ダ・ポンテというイタリア人は、モーツァルトの名作三部作の「フィガロ」「コジ」「ドン・ジョヴァンニ」の脚本家だが、前回、この「ドン・ジョヴァンニ」がモーツァルトの手にかかってオペラになると、まるで悲劇の最高傑作のように見えてくることはお話しした通りだ。

この3部作を昔から、「Commedia dell'Arteコメディア・デル・アルテ」として「コメディ」と見る風習があるのは、ご存じのとおり。

でも、このモーツァルトの3部作は、フランスの「コメディ・フランセーズ」かというと、まあ「フィガロ」という素材がもともと「セヴィリアの理髪師」の原作者、ボーマルシェの手によるもので、原作がフランス語だから、ということや、その主題がちょうどフランス革命のイデオロギーと密接に結びついていることから、「フランス的」影響をダ・ポンテ・モーツァルトの中に見ようとするわけだ。

でも実を言うと、このコメディア・デル・アルテはコメディ・フランセーズと結びつくところもないわけではないが、起源が完全にイタリアであり、しかもダ・ポンテの出身地ヴェネト州に近いヴェネツィアのゴルドーニという作家がきわめて大きな影響を与えている。ゴルドーニこそが「コメディア・デル・アルテ」という言葉を最初に使った人物なのだ。

ちなみにこのコメディアCommediaの意味は深くて、日本語に訳すことなどできない。ダンテの「神曲」が、Divina Commediaという「神聖なコメディア」という原題であって、中世から使われている。

デル・アルテはDell'Arteと書くが、このArteには2つの意味があって、
1.芸術作品みたいな意味合い
2.プロフェッショナル
の2つのうち、第2の意味なわけだ。

つまり広場で行われる寸劇は「素人」ではなく、「プロ」が行う劇となる。そして歴史的に見れば、そこにナポリの仮面劇が取り込まれて、そこにはプルチネッラやスカラムーシュといった男8人、女2人の仮面集団が、カーニヴァルの時期にヴェネツィアの広場で演じる即興劇となる。ゴルドーニはこれを台本化して、本来台本がないものをヴェネツィア方言で書き残した。(厳密に書くと大変なので、かなり歴史は前後するが、こんな感じだ。女性が16世紀のローマで既に契約書にサインしてあるドキュメントがあるのも興味深い。)

昔から即興劇だったわけで、そうなるとかなり技術というか、能力の高い人たち、エリート集団が、しゃべりと音楽を同時にこなしたわけで、貴族の間の娯楽だったのだろうが、いつのころからか、民間でも行われるようになる。その辺はイギリスのシェイクスピアの戯曲などの歴史の変遷も見てみると面白いだろう。因みにフランスやドイツは宮廷で行われるのが一般的で、日本も楽市楽座ができた信長の時代に能や狂言が生まれているのと時期は一緒。同じ16世紀の話だ。東洋と西洋で不思議な一致がある。

ナポリ発の仮面劇など、暗くメランコリックで、同時に自虐的な部分が醸し出される感覚は、コメディアをコメディとする日本人に馴染まないように思うかもしれないが、同じ16世紀に出てきた狂言を観るかぎりでは、世相を皮肉る表現や自虐性などの共通点があって、日本人の古来の文化に、どちらかと言うと近いのではないか。

仮面を使うところも同じなら、これもまた東洋と西洋の間において、不思議な一致をみることになる。

私がヨコハマでミヒャエル・ハンペ氏と共にダ・ポンテのオペラを中心としたモーツァルト上演を始めたとき、最初のオープニングコンサートで演奏したのは、まさにナポリのペルゴレージの音楽をストラヴィンスキーが組み替えた作品、「プルチネッラ」全曲を上演した。ロシア・バレエ団のディアギレフからの依頼に基づき、音楽はストラヴィンスキー、舞台はあのパブロ・ピカソが受け持って、この仮面劇を上演したので、同年に予定されていた「コジ・ファン・トウッテ」の前座には、もってこいの作品と判断した。

ピカソがアフリカの「仮面」からキュービズムを生み出す話など、一致点も見いだされて面白いのだが、長くなるのでやめておく。
素敵な週末を!

ヨコハマの自宅より
村中大祐

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