AfiA LLC. Presents
指揮者の通信講座Vol.2
注意! これを読む前に、
「クラシックを理解しよう」なんて考えちゃいけません
✔なぜ、80%の人がクラシック音楽を難しいと思うのか?
✔なぜ、演奏は良いし技術は素晴らしいのに、心に響いてこないのか?
✔クラシック音楽を理解し、感じて楽しむための、たった一つの条件とは…
テレビ朝日系列「題名のない音楽会」、日本テレビ系「深夜の音楽会」、BSフジ「Table of Dreams 夢の食卓」、NHK教育テレビ、NHKBSプレミアム、テレビ神奈川、NHKFM,FMTokyo,FM YOKOHAMAなど出演多数。第11回出光音楽賞ほか受賞多数。現在Orchester AfiA芸術監督、イギリス室内管弦楽団国際招聘指揮者。これまで英国グラインドボーン音楽祭、スイス、ザンクトガレン・オペラ祭、ヴェネツィア・フェニーチェ歌劇場など世界のオペラ座で活躍。NHK交響楽団をはじめ国内主要オーケストラに客演。東京外国語大学国際関係論卒業。ウィーン国立音大指揮科修了。マリオ・グゼッラ国際指揮者コンクール、トーティ・ダル・モンテ国際オペラコンクール指揮者部門「ボッテーガ」でいずれも第一位。トスカニーニ国際指揮者コンクールファイナリスト。村中&AfiAの「自然と音楽」演奏会シリーズは、2016年Classical:NEXTのイノヴェーション・アワードのファイナリストに世界2000団体から選ばれた。
村中大祐 (指揮者)
Photo©NAKAMURA Yutaka
ではどうやって音楽を感じればいいのか?
映画「ピンク・パンサー」で有名なピーター・セラーズの主演作品に「Being There」(邦題:「チャンス))という映画があるのを貴方はご存じだろうか?
この物語は、ピーター・セラーズ扮する主人公”チャンス”が、「庭師」の息子として生を受けた後、父親が住んでいたお屋敷の「庭師小屋」から、ただの一歩も屋敷の外には出たことがなかった、という設定で始まる。
チャンスは父の死後、父から教わった庭師の仕事を引き継ぐのだが、それから数十年の時を経て、雇い主が他界したのをきっかけに、生まれて初めてお屋敷の「外の世界」を知ることになる、という筋書きだ。
●「自分だけの世界」は真実の入り口!
それまでチャンスにとっての世界とは、
自分の生まれ育った「お屋敷の庭」だけだった。
彼はいつも屋敷のなかに居て、学校も知らなければ、
いわゆる教育というものは全く受けていない。
普通ならそのことをハンディキャップと感じるはずだが、
既に初老の彼にとって、他に友人もいなければ
自分と比べる相手もいない。
つまり「自分の世界」が彼の全てだったのである。
そんな彼がお屋敷の門をくぐり、外に出た瞬間のことだ。
お屋敷前の駐車場に止まっていたはずの
大きなロールスロイスが突然動き出し、
門から出てきたチャンスはそれと知らずに
軽くその車と接触した。
車というものを見たことのないチャンスだから
驚いてバランスを崩し、その場で倒れ込んでしまった。
ロールスロイスの運転手は慌てて外に飛び出すと、
チャンスを抱え込んで車内へと誘導した。
すると、そこには素敵な貴婦人が待ち構えていたのだ。
シャーリー・マクレーン扮する「大統領夫人」だった。
ことを穏便に済ませたい「夫人」は、自宅にチャンスを迎え入れ
医者を呼んで、チャンスの受けた傷の治療にあたらせた。
幸いケガはかすり傷程度。何事も問題はなかった。
ここからチャンスの新しい人生が始まる。
●自分の世界に例えてみたら…
もちろん「大統領公邸」に居れば、アメリカのトップ政治家たちが
毎日のように訪れて来る。そこで行われる議論は
同じ屋根の下に住んでいるチャンスの耳にも届くようになった。
そんなある日のこと、チャンスは大統領が悩み苦しんでいる場に
遭遇する。次の政策が決まらずに、思い悩んでいる大統領に向かって
庭師としての仕事から得た「自然界の森羅万象を見る眼」
で感じた世界観を、チャンスはその独特の語り口で話し始めた。
と言っても彼が何か難しいことばを話すのではなく、
極めて簡素でシンプルな言葉しか使わない。
大統領はその話を聞きながら、今自分が悩んでいる問題について
チャンスの意見を求めてみた。すると彼は
「庭にたとえるなら、今は秋の収穫の時期だ」
と答えたのだ。
その「庭師の目線で」自然からヒントを得た喩え話こそが、
困り切っていた大統領にとっては
次の政策を決めるための、非常に大切な羅針盤となった。
こうして彼は「庭師」から、
大統領補佐官のようになっていくわけだが
ちょっと不思議な言葉遊びと、その展開が極めて面白い映画と言える。
是非一度ご覧あれ。
きっとあなたのお気に召すだろう。
ここで得られる教訓とは何かと言えば、
ズバリ ,「自分の感性で捉えた世界」を信ぜよ!ということ。
わたしは先ほどご紹介したパオロの「天候と感性」の話を聞きながら、
ピーター・セラーズ扮するこの「庭師」のことを思い出していた。
実際私はここ数年、異業種の分野の方々と接することが多く、
その業種は多岐に亘っている。ジャーナリスト、作家、花屋、空手家、落語家、
絵描き、軍事専門家、政治家、経済評論家など普段話す機会がない人達ばかりだ。
彼らと話す時間は、何より刺激的な学びのチャンスなのだが、
彼らのうち多くは、私という音楽家と話すときに、
「私は音楽については門外漢ですが。。。」と謙遜されながらも、
音楽について、自分の仕事を通じて得た見識を使いながら、
誰よりも見事に、また深く理解してくれているようだ。
落語家は落語家の立場から、花屋は自然ついての見識を通じて、
音楽の本質に肉薄していく。
ひょっとすると、そうやって彼らのように
音楽を「自分の場所」から眺めることさえできれば、
むしろ音楽の方から、自分に向かって近づいてくるのではないか?
私はそう思うのだ。
●自分の強みから「新たな地平」を眺めてみる
そして結論を言うなら、
「自分のもっとも得意とする分野をつうじて、音楽のなかに共通点を見つけ出していく」ことが
「音楽を感じる」近道ではないか?ということだ。
これは先に挙げた「庭師」チャンスが、大統領に向かって政治を語るのと
同じ切り口を使う、ということになる。
あるとき、非常に有名な日本人指揮者が、テレビでこう語っていた。
「日本人としてどこまで西洋の音楽がわかるか、の実験だ。」
この指揮者の言葉は、当時、
日本中の人達が聞いていたと思うが、
私に言わせれば、取り返しのつかないほど大きな間違いだ。
私たち日本人は「西洋音楽をわかる」ために
わざわざ西洋人の頭に切り替える必要などない。
日本に生まれ育ち、日本の文化や伝統、そして日本人の持つ
類まれな感性の豊さをもってすれば、
何世紀にも亘って受け継がれて来た西洋音楽を
「感じる」ことは、どこの国の誰よりも
見事に出来ると思っている。
だから、決して「わかる」「わからない」で音楽を云々しないでほしい。
「わかる」ことより、「自分の目線で感じること」を優先して欲しいのだ。
ー村中大祐
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