From:村中大祐
私が交渉術について書き出した理由は
ニュースレターの「カラヤンの仕事術」の中で
指揮者カラヤンが若い頃
格上の相手と交渉する様子を
かなり克明に書いたのがきっかけです。
カラヤンという人は今では伝説ですが
その仕事術は意外にも極めて現場主義でした。
現代の多くの指揮者と一線を画しているのは
その叩き上げの実業家さながらの
姿なのかもしれません。
ブログの「指揮者の交渉術」第1話でも書きましたが
私自身は交渉について
誰からも学ぶ時間的な余裕はありませんでした。
私も勉強なしに
いきなり交渉の現場に飛び込んだのです。
それで良かったのかどうかはわかりません。
でも自分流の交渉術を
人は誰でも社会で生きて行くために
必ず身に付けなければならない、と思っています。
つまり交渉術も百人百様。
どれ一つとっても同じものはない。
ある人は親の信頼を勝ち得るために
生まれたときから
交渉の連続、という場合もあるでしょう。
私は兄弟がいませんでしたから
そういった交渉の必然性はありませんでしたが
そんな私が最初に交渉したのは
音楽がらみ、つまり
音楽を仕事にしようと決めた
10代の終わりごろのことでした。
どうやって音楽の道を選ぶことを
家族に納得してもらうか。
これはあなたにも経験があるはずです。
どうやって自分の思いを遂げるために
周囲を説得したらよいか。
この「交渉」は誰もが通る道かもしれません。
相手が家族であれ、友人であれ
何か自分の思いを遂げるために
人は交渉するわけです。
一番卑近な例で言うと
男性が一番初めに交渉するのは
やはり彼女をデートに誘うときかもしれません。
あなたも初デートについては
かなり明確な思い出が残っているはずです。
私は中学・高校と男子校でしたから
殆ど思春期に女性とお付き合いしたことはなく
大学に入っていきなり
女性が7割という現実に襲われました。
楽しかったですね。
女性が居るのが本来は自然なことですから
今考えれば、逆によく男だらけの社会で
我慢できたなあ、と思います。
女性をデートに誘う交渉は
どちらが上位か?と言われれば
それはもう圧倒的に女性です。(笑)
女性が待っていて、男性がデートに誘う。
最近は逆もあり、かもしれませんね。
私の場合は最初の経験として
デートに誘う相手の女性に
自分の緊張を悟られまいとして
労力を使い果たし
かなり疲労困憊した覚えがあります。
でも受け入れてもらった後は、
まさに天にも昇る気持ちでした。
この頃に今オリンピック選手などがやっている
自己暗示やイメージトレーニングといった
好都合の方法を知っていれば
問題なく相手と交渉できたのかもしれません。
でも私は数多の失敗をしながら
自分なりの方法を身に付けて来たと思います。
その時に気が付くのは
相手との関係性です。
自分と交渉相手のどちらが上位か?
それとも同等か?
自分の思いを伝えて
相手の協力を得ようとする場合
どちらかと言えば相手との関係性は
同等なのかもしれません。
入学時や入社時の試験の面接も
ある意味交渉と言えますが
これは相手の方が上位になりますね。
どうしても弊社に入ってください
と言われれば、これは別の話ですが。
指揮者の場合
大きくわけて二つの交渉があります。
最初は相手側のオーケストラ(会社)との交渉です。
マネージャーが全てを管理する場合は別として
大抵の場合はマネージャーを通じて
オーケストラ側と相談しながら
時期、曲目、ギャラ、その他の条件を
契約書に落とし込む交渉を進めます。
そして指揮者には実は
もう一つの交渉があります。
それは現場の音楽家との交渉です。
自分のやろうとしている音楽を
どうやって大勢の音楽家と共有するか?
これも一種の交渉です。
個人と集団ですから
これは実は個人と一般社会との関係に
読み替えることができます。
指揮者とオーケストラの構図は
もっと言うなら
あなたと一般社会の構図です。
つまり社会のなかに
あなた個人の考え方をどう交渉しながら
浸透させていくか?
社会があなたの考え方と違っていたら
あなたはどうしますか?
社会の考え方の流れに乗りますか?
それとも…
あなたの考え方が正しくて社会が間違っている。
そういうことも多々あるのではないでしょうか?
指揮者の考え方には歴史的な変遷があります。
そして
個人と社会との関係性を
一番良く表しているのが
この指揮者とオーケストラとの関係性です。
ある時期までは独裁者のような指揮者が
マエストロとして尊敬を集めていました。
でも21世紀に入り
独裁者的なリーダーシップは
完全に舞台上から姿を消しました。
2017年の今、どう言ったリーダー像が
今後の世界で求められていくのか?
それを読み解くカギは
実は指揮者像の変遷にあるのです。
カラヤンの仕事術①では
このカラヤンの実際の交渉の現場に
土足で踏み込んでみました。
実は「カラヤン以前」と「カラヤン以降」という形で
世界のリーダー像に大きな節目を作った張本人こそ
このカラヤンだからなのです。
ご興味のある方は是非読んでみて下さい。
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