どうも。村中です。
10月にイタリアのシーズンオープニングを
指揮することになっていますが
マーラーの5番は
かなり複雑な構造なんですね。
私がアプローチするのは
大体先ずは構造からです。
でも構造の先に
見えてくるものがある。
もちろん感情や色はありますが
街のにおいや
人々の喧騒だったり
最終的にはマーラーの手紙を
読んでいて
観えてくる世界観が
音楽のなかに表出されます。
そこまで行くためには
最初にどうしても
ピアノを弾かなければなりません。
あくまで私の場合ですが
多くはそうやって
自分のプロセスがある。
身体に入らないと
伝わらないからです。
幸いなことに
交響曲第5番は
ピアノ譜が存在します。
かなりよくできていて
これを連日弾いています。
そうすると
意味が通らなかった場所の
意味が通るようになるんです。
そうして楽譜を離れます。
音楽が自分のなかに
入って行くと
そこから楽譜との
やり取りをするんです。
そうすると日によっては
街のにおいが観えますし
日によっては
マーラー自身の感情が観える。
そうやって
楽譜と付き合っていくんですね。
この作品、マーラーの5番は
オーケストラの譜面が
間違いだらけだったりします。(笑)
ウィーンにある
Universal Editionという
版元があって
そこが大体のマーラーの
版権を持っているんですが
この5番は
ペータースという
フランクフルトの会社なんですね。
昔からの老舗です。
だからなのか、分かりませんが
オーケストラの譜面で
音が違うことが多い。
昔、まだウィーンの学生の頃に
ロリン・マゼールさんの
ウィーン・フィルとの
練習を拝見していて
曲目はこのマーラーの5番だったんですが
とにかく指揮しながら
音の間違いをずーっと
指摘してましたっけ。(笑)
マゼールさんの
その超弩級の能力は大したもの。
だけど、音楽のなかに
入っていかないのが
あの人のやり方なんですね。
だから響きは美しいし
完全な演奏っぽくなる。(笑)
でも中にイディウムがなかったりする。(笑)
まだよく覚えていますが
その日のプログラムは
メンデルスゾーンの交響曲第5番「宗教改革」が
最初のプログラム。
そして休憩後に
マーラーの交響曲第5番。
リハーサルも大変だったはずです。
このメンデルスゾーンの交響曲第5番は
私の録音がありますよね。
もしよければ
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昔このマーラーの作品は
よく聴きましたが
一番感激したのは
やはりウィーンで聴いた
シカゴ交響楽団のツアーで
指揮者がサー・ゲオルグ・ショルティでした。
やっぱり
オーケストラの機能性も大事だし
なにより音楽のデカダンスというか
クルト・ヴァイルの世界みたいな
ウィーン世紀末的な雰囲気は
この中にふんだんに
盛り込まれていて
ショルティがそこを
かなり色濃く表現していたんですね。
実際の生演奏では
それがすごくよく伝わって来ました。
もちろんCDなどで
数限りなくこのマーラーの5番は
存在しますから
是非聴いてみて頂きたいところです。
そう言えば
ウィーンでショルティ氏の演奏を
何度か聴くようになってから
かなりたって、
今度はロンドンで
ショルティさんの奥さまに
ご紹介頂いたんですね。
それでチャールズ皇太子の
演奏会にも来て下さっていて
私のベートーヴェンを
すごく褒めて下さったのが
まだ記憶に新しいところです。
世の中って、こう考えると
狭いですよね。
さて。。。
私が一番、このマーラーの5番で
面白いと思うのは
第1楽章が葬送行進曲なので
普通だったら
交響曲はソナタ形式が常套手段で
いきなり大きな枠組みの1楽章が来るんですが
マーラーはここでは
そういう手法はとらないです。
2楽章で1楽章でやり残したことを
やっている感じ。
そして3楽章でスケルツォが来て
ベートーヴェン風に言えば
緩徐楽章が来るのが
第1楽章の後なのを
第4楽章「アダジェット」でやるわけです。
そうすると
何かしらストーリーを
考えざるをえなくなります。
文学的な雰囲気が漂い始めるんです。
そのストーリーを
考えていくのが楽しいなと。
そう思いますね。
さっきデカダンスと言いましたが
やっぱり世紀末の雰囲気を
知っているのと
知らないのとでは
この曲に関するイメージも
かなり変わってきます。
私の場合、非常にありがたかったのは
私が大学生当時
日本は大変裕福だったので
日本中でウィーン世紀末の
展覧会をやってくれたんですね。
それをこぞって
観に行ったんです。
だからウィーンに行ったときは
もうある程度
雰囲気を感じ取っていたんです。
そしてウィーンでは
ココシュカ、クリムト、シーレ
だけじゃなくて
オットー・ワーグナーの建築とか
文学で言えば
シュニッツラーとかを
読みだしたんですね。
ホフマンスタールは
難しく感じましたが
アルトゥール・シュニッツラーは
楽しめました。
シュニッツェルじゃないですからね!
食べ物じゃなくて
小説の話ですから。
ちょっとフランス的な
小話の要素が入った小品が多かった。
そして内容に音楽が出てきて
それがとても新鮮でしたね。
まあ、そんな訳で
音楽とは
そういう色々な要素が大事なわけです。
シュニッツェルの話をしたら
Rauchfangs Keller
という
オペラ座近くの店に
ご飯食べに行きたくなりました。
まあ、今日はこのくらいで
やめときます。
今日も素敵な一日を。
村中大祐
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