私は幼い頃、よく親から
口を押えられたんですね。(笑)
余計なことを言う、と叱られたんですが
それは相手の大人からでした。
理由は、3つくらいから
本当の事を言う子だったそうです。
だから、周囲が面食らった。(笑)
しかも、大人が分からないことを言う。
隠していることだったのかな。
そう思っています。
私、この能力。
実は足かせだったんです。
だから、長い間、自分に封印していた。
ある時パリにウィーンから24時間かけて
マルセイユ経由で旅行したんですが
そう、かれこれ今から30年前のこと。
あ、わたし今、33歳でした。(笑)
当時3歳。ひとりで旅行していたんですが
パリで日本人の老婆と出会うんですね。
その方、私を見て「口がおかしい」と言ったんです。
口に気を付けなさい、ということでしたか。
だから、自分のアタマに浮かぶ言葉を
全て隠して生きてきました。
ところが…
指揮台に立った時に分かったんですが
指揮者の位置って、実は
人の思いが観えるんですね。
漫画キングダムで、英雄の王毅ってのがいるんですが
この大将軍が馬に乗っている景色を
自分の後継者の「シン」という主人公に託す際
大将軍の景色を見せるんですよ。
歩兵だったシンを、
自分の馬に乗せるわけですね。
そうすると「観え方」つまり
視点・視座が変わるんです。
私がヨーロッパに修行に出て9年後、
日本に帰国して
東京でオーケストラの前に立った時
いきなり、100人くらいの人の
トラウマが私を襲ったんです。
もう、衝撃でした。
それが何故なのか?
意味がわからなかった。
ヨーロッパのオーケストラでは
味わったことのない世界だった。
私の能力が開花した瞬間でした。
それまで封印していたものが
溶けたんです。たぶん。
口は禍だったはずです。
でも、私はあまりしゃべりません。
オーケストラの前では。
でも、立っただけで
強烈なショックがやってきた。
最初は怖かったです。
正直言いますが。
でも、意味が分かって来た。
それが自分のやるべき仕事だということが。
昔から宮本武蔵が好きなんです。
一条下り松で
吉岡一門と対峙するとき
武蔵は大勢を相手にしながら
実は一人と対峙していたんです。
それはまるで、自分と対峙する瞬間なんでしょう。
オーケストラの前に立つとき
私は一人と対峙することにしたんです。
それは誰でもない。
わたし自身です。
100人いても、1000人いても。
一人なんです。
これをグレングールド・リーダーという本で
私が神と仰ぐアルトゥール・ルービンシュタインが
語っています。
ルービンシュタインは、常にカーネギーホールでも
一人にアンテナを合わせるそうです。
この個と集団の無意識、超意識の領域に
わたしは音楽を通じて
アクセスしているのかもしれません。
だから、音じゃない、ということですね。
むーらん
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