From:村中大祐
ここ数年、外国人の方が来日されると
お連れするのが、葉山の古民家の中華屋さん。
個室があるのでゆっくりとお話できるし
何といっても料理が最高に美味しい!
この辺りには名店が結構あるんですね。
ここは御用邸の裏。
名前は和楽と書いて「カズラ」と読むんです。
そこで昨夜はお仕事だったんですが
どういうわけだか
話はラジオの話になりまして。
共通の趣味。
それもエアチェックが話題に。
世代の若い方はご存知ないでしょうけれど
昔はカセットテープでラジオを録音したもんです。
私のオタク気質はこのエアチェックから
始まったと言っても良いかもしれない。
そんな趣味が仕事に結びつくものなんです。
結果的に私はエアチェックが
自分の最高の栄養素だったと信じてます。
あなたのOld habit ってなんでしょうか?
ひょっとしてあなたにもオタク気質
ありませんか?
オタクのつぶやき。
第九話
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From:村中大祐
「昔、ビートルズの全曲をエアチェックして
カセットで何度も聴いたんですよ。
音は良くないけれど、それが素晴らしい
音楽体験になりました。」
古民家で中華料理を食べ乍ら
昨夜素敵な紳士と初めて食事をしたら
ひょんなことから
エアチェックの話題になった。
「村中さんも、やっぱりオタクですね。」
どうやらわたしたちはオタクを自慢しているようだ。
彼曰く、ある時期FMかAMか知らないが
ビートルズの全曲放送の快挙をやり遂げた
すごい局があったそうだ。
ビートルズのため。
音楽のため。
一種の興奮状態になった彼は
カセットを裏返しながら
音量やノイズをつまみで調整しながら
ラジオの前に陣取って、
2週間も眠れぬ夜を過ごしたという。
そしてビートルズの全曲録音が出来上がったそうだ。
そんな経験はあなたにもあっただろうか。
かく言う私の活力の源も
NHK-FMをエアチェック、
つまり夜7時15分ごろから始まる
海外の演奏会を録音することだった。
私は当時中学から高校にかけて
6年間バレーボール部に所属していたのだが
その練習が終わると
帰宅してからの日課は以下のとおりだ。
帰宅。
牛乳2リットルのラッパ飲み。
約2時間ピアノに向かう。
夕食。
その間カセットテープを回して
「海外の演奏会」録音。
夕食後、演奏会を聴く。
これを毎日のように繰り返す。
そこで必然的に出来上がるのは
カセットテープの山であり
それを整理したノートが宝だった。
目的はたったひとつ。
ライブ録音の聴衆が醸し出す臨場感。
緊張感。その異様なまでの雰囲気。
それを味わうこと。
音の奥底に流れる精神を感じること。
これに尽きた。
10半ばの若者は、ある意味そこに
自分の人生の意味を見たわけだ。
今でも思いだすのは
クラウディオ・アッバードが
当時できたばかりの
グスタフ・マーラー・ユーゲント・オーケストラを
指揮した
マーラーの交響曲第3番の美しさ。
夏の交響曲と言えば
この曲がまさに代名詞で
Der Sommer marschiert ein.
直訳すると
「夏が行進してこちらに向かって来る」
そんなまるで夏の風物詩の音楽を
20代前半の若者たちが
魂を合わせて謳いあげる。
忘れもしない。
私が外語大学2年のとき
ピアノのヨーゼフ・ディヒラー師の
ウィーンの夏期講習に行ったが
初めての外国で
最初に降り立ったウィーンで
ある音楽家の集団に出会った。
チェロのケースを持った男性に出会い
声を掛けてみると
グスタフ・マーラー・ユーゲント・オーケストラの
メンバーだと言う。
「これからクラウディオ(アッバード)とツアーに出るんだ。
君は音楽家?将来共演できるといいね。」
ラジオで出会った音は
この青年の音でもあったものだから
びっくりして
感激して
ラジオは世界をつなぐと
本気で思った。
素敵な一日を。
横浜の自宅から
村中大祐
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